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離婚協議書に押印は必要か?
離婚協議書には、当事者の署名ないし記名のうえ、押印することが慣例となっていますが、脱ハンコが進む現在、押印は必須なのでしょうか?
実は、押印は、条件によっては不要です。
離婚協議書はいわゆる「私文書」であり、民事訴訟法228条4項によると、「本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」とされています。
つまり、離婚協議書(私文書)について、当事者の署名(自著、サイン)があれば、それは真正に成立したものと推定されるため、押印は必須ではないことになります。
他方、当事者の氏名が印刷されていたり、ゴム印であったりしたときは、それは「署名」には当たらず、真正に成立したと推定されるには、押印が必要となります。
当事務所では、上記の規定を受け、離婚協議書の末尾には、「本合意の証として、本合意書2通を作成し、甲乙相互に署名又は記名・捺印のうえ、各1通を保有することとする。」と記載しています。
当事者は、離婚協議書には署名又は記名と捺印のうえ、離婚協議書を締結することになります。
なお、当事務所では、かつて離婚協議書にご依頼者様(妻)の署名があるものの押印がないことで、相手方(夫)から離婚協議書は無効ではないかなどと主張され、裁判所を使うような手続に発展しました。
裁判所としては、「相互に署名又は記名・捺印があれば申請に成立したと推定される」という当事務所の主張を全面的に支持し、相手方(夫)の主張は退けられました。
以上のように、離婚協議書は署名があれば、原則的には有効であり、押印は必須ではありません。
もっとも、文書の信頼性を高めるという意味では、署名に加えて押印することは通例です。
ちなみに、当事務所が作成した離婚協議書には、当事務所の名称と当職の氏名が記載され、職印が押印されます。
これは、離婚協議書の悪用や漏洩を防ぐとともに、民事訴訟法228条4項により、記名と押印にて真正に成立した文書としての扱いを受けるためであり、また、行政書士には、作成した書面への押印義務があるためです(行政書士法施行規則9条2項)。