お知らせ
清算条項の意義とその範囲
離婚協議書では、「本件離婚に関する一切を解決したものとし、本合意書に定めるもののほかは、今後、財産分与、慰謝料等の名目の如何を問わず、互いに金銭その他の請求をしない」というような清算条項を設けることがあります。
これは、この離婚協議書で、離婚に関する一切を解決したことを確認し、今後、お互いに慰謝料や財産分与の請求をしたりされたりしないことを意味します。
後日に相手方から請求されることがなくなる代わりに、こちらからも相手方に対し、請求することができなくなります。
したがって、清算条項は、離婚の全面的な解決となると同時に、お互いの権利と義務を確定させるものとなります。強力な条項ですので、そもそも清算条項を設けるべきかどうかは慎重な判断が必要です。
今後の協議や話し合いの余地、事情の変更の可能性がありそうな場合、かえって清算条項があることで、協議や話し合いが難しくなる場合があります。
その場合は、あえて清算条項を外し、事後の協議や、事情変更による追加での請求をしやすくすることもあります。
当事務所では、清算条項を設けることは比較的少ないように思います。
理由としては、事後の協議や事情の変更による追加請求の余地を残しておきたいというご依頼様が多いためです。
もっとも、清算条項があったとしても、当事者間での合意があれば、新たな合意内容として「上書き」することは認められます。
離婚後の相手との関係性を踏まえて清算条項の有無を検討するべきだと思います。
ちなみに、清算条項を設けた場合でも、年金分割は清算条項に関わらず行うことができます。
これは、離婚協議書の清算条項が夫婦を当事者とし、清算条項の及ぶ範囲が夫婦間に限られるということがあるためです。
年金分割は、厚生労働大臣に対して請求するものであるため、厚生労働大臣は清算条項の効力が及ぶ当事者(夫婦)に該当しないためです。