お知らせ
夫名義の物件に住み続けるには?
離婚が決まり、夫が出ていくことになったものの、これまでに夫名義で賃借していた物件に妻や子が住み続けることはできるのでしょうか?
言い換えれば、賃借人不在のなか、賃借人以外の者が物件を借り受けることはできるのでしょうか?
結論としては、夫名義の物件に住み続けることができます。
東京地裁昭和39年8月5日判決によると、夫婦の同居時に家族の住居として夫が家を借りた場合には、家族の一員である妻も賃借人たる地位を持っていると考えることができると判示しています。
賃料の支払い状況等も考慮されますが、家主(貸主)や夫、妻との信頼関係を著しく破壊させる事情がない限り、配偶者も賃借権者として保護すべきであるとしました。
よって、家族の住居として家を貸借した場合には、例え夫(賃借人)と家主とが賃貸借契約を合意解除したとしても、もう一方の妻も賃借人たる地位を有しているため、特段の事情がない限り、家主は妻に対して物件の明渡しを求めることはできません。
また、結婚前から夫が借りていた物件について、離婚成立後に夫が出ていった場合においても、妻が約定どおり賃料を支払い続けて住んでいたような事情では、夫から妻への賃借権の譲渡又は転貸に関して家主の黙示の合意があったとみることもでき、住み続けることができます。
もっとも、離婚時には、賃借権の譲渡ができるのであれば、離婚協議書にその旨記載するのが望ましく、改めて妻と家主との間で賃貸借契約書を締結することがベストです。